インタビュー企画【ママから“私”へ】第1回:ナミキ アユミさん〜誰かを想う時に、”私”が見つかる

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このコーナーでは、出産や育児をきっかけに立ち止まりながらも、自分らしい働き方を模索してきた女性たちの体験談をお聞きします。ママになってから、“ひとりの私”としての自分をあらためて問い直し、再構築していく——そんなストーリーをお届けします。

今から新しい仕事を探すにも、自分のやりたいことって何だろう?
そんなふうに立ち止まる瞬間、ありませんか? 

第1回は、デザイナーであり、コーチでもあるナミキ アユミさん。 「自分が何をしたいかなんて、悩んだことない」という一言に、人生のヒントが詰まっていました。

話を聞いた人

ナミキ アユミさん
ブランディングデザインにコーチングの要素をかけ合わせた「トータルデザイン」を得意とする、マルチ対応型のフリーランスデザイナー。印刷物からWebまで幅広く手がけ、1歳育児中に「並木舎」として独立。現在は中学生の男の子を育てるママでもあり、今年からはInstagramのブランディングサポートも手がけるなど、精力的に活動している。

Webサイト:https://www.namikisya.com/
Instagram:@namiki.ayumi
公式LINE:lin.ee/XZZ96no

“やりたいこと”ではなく、“できること”で独立

今の仕事を始めたきっかけって、どんなことでしたか?

アユミ

子育てしながら今の自分にできることが「デザイン」しかなかったからですね。

アユミ:最近って、「やりたいことを見つけよう」とか「夢を叶えよう」とか、よく言うじゃないですか。でも、私の場合はそういうのじゃなくて、「今できることがそれしかなかった」んですよね。正直、かっこいい話ではなくて(笑)。

当時、不妊治療をお休みしていた時期に、自然妊娠したんです。うれしかったんですけど、そのタイミングで夫の給料がガクンと下がってしまって…。これから子どもも生まれるのに、“どうしよう”って焦りました。

家でできる仕事を探した結果、その時の私にできるのがデザインしかなかったんですね。保育園に預ける予定もなかったので、それが一番現実的で。先輩に「ホームページ作るなら開業届も出しなよ」と言われ、慌てて届けを出したのが始まりです(笑)。

彩:開業前はどんな働き方をしていましたか?

アユミ:25歳で広告制作会社に入って、2社で6年くらい勤めました。
そのあと、ハンドメイド雑貨を10年くらい作っていて。デザインの仕事は、知人から頼まれたときにちょこっとやるくらいでした。

ずっと「ものづくり」に携わってこられたんですね!

“できること”の出発点は、“好き”なこと

「やりたいことじゃなくて、できることだった」とおっしゃっていましたが、そのことに違和感を覚えたり、「なんでこの仕事してるんだろう?」と思ったことはありませんか?

アユミ

たしかに「やりたい!」って思って始めたわけじゃないけど、好きではあったんですよ。

アユミ:子どもの頃から絵を描くのが好きで、友だちに描いてあげるとすごく喜んでくれて、それが嬉しかったんです。美術の授業で褒められた時も、すごく自信になりました。

ほかでは劣等感のかたまりだったけど、絵やデザインだけは、自分の存在を肯定できた気がします。

私にとって「人の役に立つこと」と「喜んでもらうこと」は、ずっとイコールなんですよね。
デザインは、そのための手段のひとつです。

彩:アユミさんにとっての「やりたいこと」は、「人の役に立ちたい」という想いそのものだったんですね。

だからこそ、“自分が何をやりたいか”って手段には、あまりこだわらなかったのかもしれませんね。

“好き”に“得意”をかけあわせてみた

コーチングを始められたのは、どうしてですか?

アユミ

ある時、お客さんからとても長いクレームのメールをもらって…かなり精神的にきてしまったんです。
当時の私は、否定や批判にとても弱かったんですよね。

アユミ:ちょうどその頃、「HSP(※1)」や「ストレングスファインダー(※2)」の存在を知って、診断してみたら、一番強い資質が「共感性」だったんです。

“ああ、自分にはこういう特性があるんだ”と腑に落ちたことで、ようやく自分の扱い方がわかってきて。
そこから「もっと強みを活かした働き方がしたい」と思うようになって、個別相談の「整う相談室」を始めたり、コーチングを学んだりしました。

コーチングは、自分にとって“好き”というより“得意”なことなんです。昔から、人の感情の動きに気づいたり、言葉にしづらい気持ちを読み取るのが自然とできていて。

それに、相手と心が通じ合ったときとか、価値観や感性に触れた瞬間って、自分もすごくワクワクするし、幸せな気持ちになるんです。

彩:デザインという“好き”なことに、コーチングという“得意”なことがかけ合わさって、アユミさんらしい形になっていったんですね。

人を喜ばせる手段が増えたことで、届けられる価値も広がったんだなと思いました。

※1 HSP(Highly Sensitive Person)とは、音や光、人の感情などに敏感で、繊細な気質を持つ人を指す言葉です。医学的な診断名ではなく、心理学の概念として知られています。

※2 ストレングスファインダーは、自分の「得意なこと」や「強みのタイプ」がわかる診断ツール。仕事や人間関係に活かしている人も多くいます。
出典:Gallup公式サイト

“やりたいこと”は、自分の中ではなく、人との関わりの中で見つかる

アユミさんのお話をきく中で、「自分がやりたいこと」よりも先に、「どうしたら人の役に立てるか」を考えるという視点がとても印象的でした。

アユミ

ビジネスの基本って、やっぱりそこだと思うんです。

アユミ:“Want(自分がやりたいこと)”・“Can(自分にできること)”・“Need(求められていること)”——この3つが自然に重なっている状態が、理想かなと。

私は最初は「can」起点でしたが、気づいたらこの3つが重なっていた。だから迷わなかったのかもしれません。

アユミさんの場合

  • Want(やりたいこと):人の役に立ちたい
  • Can(できること):ものを作る・寄り添う・図解で整理する・相手の想いを形にする
  • Need(求められていること):デザイン・ブランディング・コーチング

“やりたいことがわからない”って悩む人も多いけれど、「自分の中から見つける」だけでなく、「人との関わりの中で自然に浮かび上がるもの」に目を向けるのもひとつの方法かもしれませんね。

死ぬギリギリまで、誰かの役に立ちたい

アユミ

最近は、「人の役に立ちたい」というWantの視座が、もっと高いところに向かってきていて。今は「平和で豊かな未来を子どもたちに残したい」っていうのが、自分のWantだと思っています。

アユミ:実は表立っては語っていませんが、活動の根底には「子どもたちが苦しまない社会にしたい」という想いがあります。でもそのためには、まずは子どもと直接関わる大人(特に親)が満たされていることが大事だと感じていて。だから、そういう大人を増やしたいと思っています。

私は、死ぬギリギリまで誰かの役に立っていたいんです。
もちろん、引退してから旅行や趣味など、自分の「やりたいこと」だけをして過ごす人生も素敵だと思います。でも私は、きっとそれだけでは物足りない。

「人の役に立つ」っていうのはどんな形でもいいと思うんです。
誰かの背中をそっと押すことかもしれないし、
何かのきっかけになったり、気づきを届けたり。
癒しだったり、安心してもらうことだったり。
その人の心が少しでも動くことができたら、それでいいんです。

彩:それが“アユミさんの軸”なんですね。

人生をかけて、形は変わっても「人の役に立ちたい」という想い。アユミさんはそれをすでに見つけているんですね。

育児と仕事の両立より、子どもとの時間を“満喫する”

ここで少し時間をさかのぼって、子育て中のお話も伺いたいです。お仕事と育児の両立で、大変だったことはありましたか?

アユミ

正直、「両立」ってあまり意識してなかったかも。⁠

アユミ:起業当時は、息子が“かまってちゃん”で(笑)。一緒に寝ないと起きちゃうし、早朝に2〜3時間起きて作業したりしていました。⁠

日中は全然集中できないし、「どうせ無理だし、もう楽しもう!」と思って子どもとたっぷり出かけてましたね。そのついでにチラシ配ったり、出かけ先でちゃっかり宣伝もしたりして(笑)。

彩:なかなか作業時間も取れないし、焦りはなかったんですか?

アユミ:もちろんあったけど、「今は子どもとの時間を大事にするタイミングなんだな」って、気持ちを切り替えるようにしてました。

今、息子は中学生で反抗期真っ只中。スキンシップもなくなって、あっという間に親離れしちゃって…。正直、私の方が気持ちが追いつかないくらい、あっという間に親離れしてしまいました。
だからこそ、あの時期にたっぷり向き合えた時間があってよかったって、いま心から思うんです。

たしかに…。子どもとべったり過ごせる時期って、思ったより短いんですよね。

アユミ:そうなんです。子どもが親から離れていく日はいつか必ず来ます。だから、いま子どもと過ごせる時間があるなら、思いっきり楽しんでほしいなと思います。お互いにとって、それがきっと、かけがえのない宝物になるから。

育児・キャリア・家族・健康など、生き方に悩んでいる女性へ

いま、育児・キャリア・家族・健康など、自分の生き方に悩んでいる女性に向けて、アドバイスをお願いします。

アユミ

悩んだときは、「どんな自分もOK」と認めてあげてください。

アユミ:人と比べてしまったり、子育てでイライラしてしまったりしても、まずは「どんな自分でもOK」と、自分を認めてあげてください。「私ってダメだな…」なんて、本当に思わなくていい。不完全なのが普通なんです。

私は、自己否定と自己犠牲のエキスパートみたいな時期もありました。そんな私が今、本当に声を大にして伝えたいのは——「そんな自分でも、いいんだよ」ってこと。

「どんな自分もALL OK」と受け入れる感覚——いわゆる“自己肯定感”がないと、⁠「こうしたい」「こうなりたい」っていう“次のステップ”にはなかなか進めません。⁠土壌が豊かであれば植物が育つように、⁠自分を肯定できる土台があれば、人は変われるんです。

未来は「先に設定」していい

アユミ:大切なのは、「理想の未来」から今を見てみること。時間は、過去から未来へ一直線に流れるものではなく、まずは「こうなりたい未来」をイメージすることで、そこから今が形づくられていく——私はそんなふうに考えています。

どうせうまくいくから」。
そうやって、自分を信じて選択と行動を重ねていってほしいです。

まずは口に出してみて。アファメーションのすすめ

アユミ:たとえ今、まだそうは思えなくても——まずは、声に出して言ってみてください。
アファメーション(=肯定的な言葉を繰り返すこと)は、とてもおすすめです。私の母はよく、「言葉には魂がある」と言っていました。

アユミさん流「アファメーションのコツ」

言葉+動作を組み合わせてみる
例:「大丈夫」と言いながら、胸をトントンと軽くたたく(赤ちゃんに優しくトントンするように)

五感を使って、自分に心地よい刺激を与える

👀 視覚:好きな写真を見る
👃 嗅覚:好きな香りを嗅ぐ(アロマなど)
👂 聴覚:心が安らぐ音楽を聴く
👅 味覚:あたたかい飲み物を飲む
🤲 触覚:自分の体に優しく触れる(ハグ・なでるなど)

いろんな方法があるけど、香り(嗅覚)だけは“感情をつかさどる脳の場所”に直接届くと言われています。そう思うと、アロマはとても試しやすい気がしますね!

アユミさん、ありがとうございました!

さいごに

産後は特に、女性がいったん立ち止まらざるを得ない時期があるものです。その間、心の中にいろんな思いが渦巻くこともあるのではないでしょうか。

ママになる前の“私”って、どんなだったかな…
これから私は、どう生きていきたいんだろう…
今までの生き方って、本当にこれでよかったのかな…
なんだか、自分だけ取り残されている気がする…

そんなふうに迷ったときは、アユミさんのように、「今はこういう時なんだよね」と、自分の今をまるごと認めてあげる。それだけで、少し心がやわらぐかもしれません。

理想の未来の見つけ方は、人それぞれ。まずは「今の自分」にOKを出してからで大丈夫。
そのうえで、自分に合ったやり方で——ママから“私”へと、一歩ずつ歩き出せたらいいなと思います。

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この記事を書いた人

彩のアバター 子育てフリーランス

6歳ひとりっ子のママ。保育園に預けながらフリーランスのUIデザイナーとして活動中。長く使えるコスパよしな育児グッズを探すのが得意。

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