子どもの登園しぶりや登校拒否は、多くの親にとって困惑する問題ですよね。昨年、私の娘も登園を嫌がり泣く日々が続き、悩んでいました。
自分だけで何とかしようとしましたが、家庭でも保育園でもない第三の場所を用意する「療育」という選択肢を知り、利用を始めました。その結果、娘の登園しぶりは次第に緩和し、親子関係もよくなりました。これにより、家庭の外に助けを求めることの重要性を痛感しました。
フリーライターであり2児の父親でもある遠藤光太さんは、自身の発達障害(神経発達症)の特性と向き合った経験をもとに、自分だけで何とかしようとするのではなく、積極的に周囲の助けを借りる「社会にひらかれた育児」を実践しています。
今回は、遠藤さんに子どもの発達特性や登園しぶりとの向き合い方、そして療育や通級などの支援制度やサービスを利用する選択肢についてお話を伺いました。
遠藤 光太さん
多方面で活躍するフリーライターであり、2児を育てる父でもある。初めての育児と同時期に自身の発達障害(神経発達症)の特性と向き合う中で、自分が無理をしすぎない「社会にひらかれた育児」を実践している。2022年にその経験を綴った書籍も出版。
https://note.com/kotart90
公式note:公式X:@kotart90
書籍:「僕は死なない子育てをする 発達障害と家族の物語」(創元社)
保育園時代の「療育」について
療育利用のきっかけ
——遠藤さんは保育園時代に療育などのサービスは利用されていましたか?
利用していました。娘の様子が気になりだした時に、こども発達センターに相談に行って、「WISC」という知能検査を受けたりしました。診断名はつかなかったんですけども、そこで「療育」という形で何度か行政でお世話になりました。
——保育士さんなどからアドバイスを受けてではなく、ご自身の判断で発達センターに相談に行かれたんですか?
そうですね。聴覚過敏の特徴でもあるんですが、娘が「保育園で音がうるさい」と訴えることもありました。様子を見ていて、音が苦手なように感じることもありました。あとはこども発達センターに通い始める前後で「1人で遊ぶ方が好き」と娘が自分で言っていたりしたので。
保育園からは何も言われていないですが、妻が保育士なんです。一時期は妻の勤務していた保育園に入っていたので、園での娘の様子を妻が見ていたというのも、判断の要素としてはありました。
療育は診断が下りていなくても利用できる(※通所受給者証の発行は必要)
——最近では診断名をつけないことも多いようですね。
そうですね。グレーソーン※のまま育てるというスタイルは、進んできてるのかなという印象を受けますね。
※グレーゾーン:発達障害(神経発達症)の傾向が見られるものの、医療機関で診断されない場合に使われる言葉
——そうなると、療育を利用するかしないか、親側に意思決定が委ねられるようになりますね。
そうですね。そこはちょっと社会課題だと思います。
お医者さんに「様子を見ましょう」と言われて、その後どうすればいいか分からなくなったり、どこにもつながらないままになってしまうというケースもよく聞きます。
あとは、受診までに長い待ち時間があって…という話も聞いたことがあります。自治体によっては長いと3ヶ月以上待つなんてこともあるみたいですね。
——待ち時間が長いと、利用前に療育を断念してしまう親御さんも多いかもしれませんよね。
私も待ち時間が長かったので、発達センターではなく発達外来がある小児科に相談に行きました。
医師の方に「療育は診断が下りていなくても利用できるので、悩んでいる親御さんがもっとカジュアルに利用できるようになるといい」と言ってもらえて、とても勇気づけられたのを覚えています。
悩んでいる方がいたら、いちど発達外来に相談に行くという選択肢もあります。
豆知識:療育(発達支援)とは?
障害のある子どもやその可能性がある子ども(0〜未就学児)が利用できる通所支援サービス。子どもの障害特性や発達状況に合わせて、困りごとの解決や将来の自立などを目指して支援・サポートを受けることができます。
「療育」という言葉はもともと身体障害のある子どもへのアプローチを表す用語として使われていましたが、子どもの発達を支援するアプローチの総称として使われることが多く、「発達支援」という言葉もほぼ同義語として使われています。
療育は、「何かしらの障害があると診断された子ども」しか利用できないイメージがありますが、診断の有無にかかわらず「発達の遅れが気になる」「なんとなく育てにくさを感じる」という場合でも利用できます。
ただし、利用するには通所受給者証(※)の発行が必要です。
※通所受給者証:療育などの支援サービスを利用するために、市区町村から交付される証明書
費用について
原則として国や自治体が9割負担し、家庭では1割負担となっています。
ただし、2019年10月から開始された幼児教育・保育の無償化の制度により、3歳から5歳までの子どもの場合は利用者負担が無償化されます。(その他の食費・教材費などは別途発生)
参考サイト:
【専門家監修】療育(発達支援)とは?種類や指導方法、対象、受けられる施設、効果について | LITALICOライフ
児童発達支援の利用料金(利用者負担)はいくらになる?
受給者証はどうやって取る?児童発達支援・放課後等デイサービスの利用までの流れを解説 | LITALICOジュニア| 発達障害・学習障害の子供向け発達支援・幼児教室| 療育ご検討の方にも
療育を利用するまでの流れはこちら!
個別支援計画書を作成し、家庭療育のヒントに
——療育は、どのくらいの頻度で通っていましたか?
娘は「週◯回」など、定期的に療育に通っていたわけではないんです。こども発達センターに何度か行って、特性を教えてもらったりしながら、家庭と保育園で見守っていくという形にしました。
——子どもの特性を知るために発達センターに通っていたんですね。
はい。こども発達センターで「個別支援計画書(※)」というものを作れるんですよね。
保育園から小学校に上がる時、小学校から中学校に上がる時、学年が変わる時など「何かの変化が起こるタイミング」で、個別支援計画書を持っておいた方がいいなと思っていました。
こども発達センターに通ったのは個別支援計画を作るところまでで、その後は定期的に施設に通う療育は必要としませんでしたね。
※個別支援計画書:療育施設を利用するにあたり、子どもについて気になっていることや現在の困りごと、今後の希望などをもとに目標や達成時期を決めて、療育施設で支援していくための計画書。その後も6カ月ごとに見直しが入り、子どもの様子を見ながら計画書を作成してもらえる。
参考サイト:
療育における個別支援計画書の書き方を徹底解説!放課後等デイサービス向けの記入例も紹介|療育biz
——遠藤さんは個別支援計画書の療育内容をご家庭で実践されたということですね。
そうですね。僕自身が子育ての途中で発達障害の診断を受けたんです。まずは娘のためというより、自己理解の一環として特性を勉強していき、それを活かして娘に接する形でしたね。
個別支援計画を作ることによって、小学校からは通級指導教室を利用できました。そういった専門機関をうまく頼れるように繋げたというイメージですかね。
私の場合は、娘に定期的(週1回)に民間の療育施設に通ってもらっています。
もし療育を利用することに迷いがあったり、定期的に施設に通うまでの必要性がなさそうな場合は、まずは遠藤さんのように家庭で療育を実践してみるという選択肢もありますね。
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