小学校時代の「通級」について
入学前から色々な選択肢を用意しておいた
——小学校で「通級(※)」という選択をしたきっかけや理由を教えてください。
いろいろな制度を学んでいく中で、自分自身の子供時代を振り返って感じたのは「通級みたいな場所があったらよかったな」ということです。
それもあって、本人の希望を聞いた上で、小学校入学時には「通常級+通級」という形を選択しています。また、入った後も、フリースクールや、学びの多様化学校(不登校特例校)など、いろいろな選択肢を実際に見学するために足を運んでいます。
※通級(通級指導教室):小学校などで一部の授業を通常の学級とは別の通級指導教室で受ける制度のこと。学習や生活の困難を解消するため、子ども一人ひとりの特性に合わせた授業が行われている。
——入学前から通級を取り入れている小学校をリサーチするなど行動されていたのでしょうか?
入学前から通級を視野には入れていていました。在籍校にあった方がいいなと思ったので、通級を取り入れている小学校の学区に引っ越しました。
実際に利用するかどうかは、入学してから決めればいいと思ってたんですけど、選択肢を多く持っておこうと思って。
私も現在、娘の入学を目前にして就学相談(※)を受けている最中です。そこで意外だったのは、通級も療育のように診断が下りていなくても利用できることでした。
子どもの発達で何か気になるようであれば、選択肢を広げるという意味でも、いちど就学相談を利用してみるといいかもしれませんね。
※就学相談:成長や発達、学習面での心配がある子どもの就学先について相談すること。通常学級、通級(通級指導教室)、特別支援学級、特別支援学校などの選択肢の中からどこへ進学するかを選択する機会となる。その場で通常級が使えなくなってしまうのではなく、あくまで意思決定は保護者にある
登下校の付き添いなども視野に入れ、柔軟な働き方へシフト
——通級を取り入れている学校に入学してみて、いかがですか?
在籍校に通級があると、通級の先生と担任の先生とが連携できますし、子どもが通常クラスに入りづらい時はいったん通級に逃げたりなど柔軟に対応できます。
あとは、担任の先生が新任の場合は、特性のある子供に対しての対応に慣れていないこともあります。そういった時に、通級の先生から担任の先生にアドバイスしてもらえたりして、ありがたかったです。
ですが、その後にまた引っ越しをしたので、今は他校通級(※)を利用しています。
※他校通級:児童生徒が在籍している学校に特別支援教室がない場合、他の学校にある特別支援教室に週に数時間通い、定期的に指導を受ける形態。
——現在は他校通級を利用されているんですね。送迎はどうしていますか?
送迎は週に1回僕がやっています。フリーランスのライターなので、そこは柔軟に。
今は1・2時間目に通級に通っているので、朝に娘を通級に送って僕は近くのカフェで仕事しながら待ってます。娘が終わったら在籍校に送り届けて、また帰って仕事して…という感じです。
娘が年長の時にフリーランスになったんですが、途中で登下校するときや通級の送迎などの動きも出てくると想定して働き方を変えたというのもありました。
——私は車が運転できないので、送迎がネックで悩んでいます。通級を採用している学校に入学できればいいのですが…。
車が使えないと厳しいですよね。通級は数が少ないので、車の送迎が発生するケースはありますし。ただ、「ご自分だけで」と考えなくてもいいかもしれないです。他にも選択肢はたくさんあります。
例えば、うちの娘は週1回オンライン家庭教師を利用しています。
先生は特性のある子供と接することに慣れていて、例えば娘が話よどんでる時にはちゃんと待ってくれたりして、すごく丁寧に接してくれています。
ついつい「自分だけでどうにかしなければ」と考えていました。子どもに寄り添う選択肢は、探せばたくさんあるんですね。
通級などの支援制度を利用することのメリット・デメリット
——通級を利用してみてよかったことは何ですか?
合理的配慮(※)を受けやすくなったことです。
学校がつらくなって途中で帰りたくなった時に、「なかなか担任の先生に言い出せない」という困りごとがあった時期がありました。
通級で相談したら「意思表示のカードを作ったらどうか」と。「帰りたいです」と書いたカードを机の上に入れておいて、帰りたくなったら先生にカードを見せるんですね。そんな風に通級の先生がやり方を一緒に考えてくれました。
また、娘の場合で言うと、大きな音が苦手なのでイヤーマフを使うことを許可してもらっています。イヤーマフを使う方法は僕が知っていたのですが、「他の生徒にどう説明すると受け入れてもらいやすいのか」といった知見は、通級の先生を頼っていました。そういう時にうまく橋渡ししてもらったり、サポートしてもらえてありがたかったです。
そういった困りごとが生じるたびに通級の先生に相談しながら、担任とも連携していけました。学年が上がるとまた連携して引き継がれていくので、助かりましたね。
※合理的配慮:授業を受けることに対して困難さがある場合に、子どもの特性に応じて先生や学校側から受けられる配慮のこと
——通級を利用してみて、何かデメリットと感じることはありましたか?
特にないですね…お金もかからないですし。本当に必要な子にはいき渡って欲しいなと思います。強いて言えば、他校通級となった場合は親側に送迎の負担があることですね。
あとは、デメリットとは違うかもしれませんが、通級の数が少ないため、まだ利用したい気持ちがあっても「卒業」しなければならない場合があります。娘も大きくなってきて、だいぶ自分の特性を理解できてきたので、卒業の話をし始めていますね。
ここがよかった!
・合理的配慮を受けられる
・担任や周囲への説明などを通級の先生がサポートしてくれる
注意点
・他校通級の場合は送迎の負担がある
・まだ利用したい気持ちがあっても卒業しなければならない場合も
——通級が利用できなくなった場合は、先ほどの話でも出たように、「通級以外のサービス」を利用するという選択肢もありますね。
そうですね。たとえば放課後等デイサービス(放デイ)などは、専門的な支援を行ってくれます。通級と違ってお金は少しかかりますけど、補助があるのですごく高額にはならないですし。
ただ、施設によって質に違いはあるようです。複数ある地域であれば見学をして、良い放デイを選ぶのが大事だと思います。
豆知識:通級以外の選択肢とは?
遠藤さんに教えていただいた「通級以外の選択肢」について、自分なりに調べてみました。
※初めて調べた情報を元に作成しているため、情報に不備や不足がありましたら、ご指摘いただけると幸いです。
放課後等デイサービス(放デイ)
障害がある小学生・中学生・高校生(6歳~18歳)の子どもが利用できる通所支援サービス。利用には受給者証が必要だが、療育と同じく障害の有無に関わらず利用できる。
利用時間帯は放課後や休日、夏休み・冬休みなどの長期休暇。施設が家や学校から遠い場合は送迎のサービスを受けられることも。費用は基本的には利用料の9割が給付され、1割が自己負担。(その他の食費・教材費などは自己負担)
フリースクール
不登校の状態にある子どもがある一定の期間、学校の代わりとして過ごす居場所。その地域の小・中学校と連携していることも多く、フリースクールへの登校が学校の出席扱いとされるケースも。
放課後等デイサービスと併用したりすることも可能。民間団体が運営しており、地元の学校に籍を置きながら通う形が一般的で、費用は自己負担。東京都などでは費用補助も始まっている。
学びの多様化学校(不登校特例校)
不登校の児童・生徒の実態に配慮した特別の教育を行う学校。文部科学大臣指定の学校であり、通う場合は在籍している学校から転校(編入)する。
子どもの個性に合わせた教育を受けられ、一般の学校と同じく卒業資格を得ることができる。全国的にまだ数は少ない。
オンライン家庭教師
ビデオ通話やチャット、オンラインホワイトボードなどのデジタルツールを使って家で学習指導などのサポートを利用できる。発達障害(神経発達症)や不登校の子どもを専門として、ひとりひとりに合わせてカリキュラムを組んでくれるサービスもある。
費用はサービスによって差があるので、よく選んで判断することが必要。
参考リンク:
放課後等デイサービスとは?利用条件や支援内容、児童発達支援との違いなどをわかりやすく解説【専門家監修】
フリースクールとは? 学校に代わる学びの場 – 不登校の原因・対策解説ノート
フリースクールとは?授業内容や費用は?不登校の子どものための支援や相談先も解説
『あつまさ先生の道しるべvol.44』~学びの新たな選択肢「学びの多様化学校」~
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